大型ビル・工場の建設における空調設備の中でも、動脈の役割を果たしているのが、ダクト設備です。建物が大きくなればなるほど、ダクト設備の役割は重要となります。当社で製作し施工されたダクトは、空調機械室からオフィスルーム、劇場のホール、デパートの売場などに送られ、クリーンで快適な環境が創りだされています。
設立から60年、会社を継続し拡大することが出来たのは、コツコツ真面目に仕事をしてきたということに尽きます。世の中はこちらの予測通りには変化しません。時代を読むことも大事ですが、腰を据えていたずらに時代に翻弄されないことです。
終戦から間もない昭和23年に創業者である先代の父が東京都港区芝でダクト空調会社を創業しました。はじめはビルの建設も少なく、一般の建築板金を兼業していましたが、やがて国内景気も復興し、ダクト設備の必要な大きな建物も建ち始めました。
当時のダクトは製作も手加工がほとんどで、米軍キャンプや劇場、映画館などの工事が多く機械化は暫く後のことになります。その後昭和29年に法人化し、私はその翌年入社しました。そのころから事業はようやく軌道に乗り始め、当時は10人程度だった社員の数もその後20人、30人と徐々に増えて行きました。私は体調の悪かった父に代わり、これまでとは違う中堅以上の有望な会社との新規取引を開拓しました。後年、父を車に乗せて都内の受注した大型ビルを案内したとき、父が感慨無量の面持ちであったのを今でも覚えています。
このようにコツコツと堅実に現在の会社の基盤を作ってきたわけですが、この業界は努力なくして昔馴染みの顧客がそのまま引き継がれるわけではありません。客先の担当者は時代により変わるので、さまざまなお客様と仕事を通じ円滑な人間関係を築く必要があります。
一方、ダクト製作の特徴は本体の製作から取付けまで、図面を描くことからはじまります。
他の建築や設備の多くはメーカーから仕入れたものを現場で組み立てて取り付ける作業ですが、ダクトはオーダーメイドで、切断や展開こそ機械化されましたが組み立ては機械化できない手作業の部分なので熟練した技能を要します。また、現場での作業は安全を第一に、複数の人間が協調しながらプラスアルファの力をださないといけません。一人天下の世界ではないので、良い仕事をするにはやはり人と人とのつながりが大事です。
弊社はそのようなコミュニケーション能力の高い、勤勉で熟練した技術者に恵まれています。そしてそうした先輩の姿を見て、さらに勤勉な若手が育つという、すばらしい環境ができあがっています。
故 会長(二代目社長)須長 義明